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EUについて学ぶ

今学期最後に取っていた授業は「ヨーロッパ事情」というクラス。これはEUの仕組みを勉強するので、欧州在住者にとってはとても興味深い内容です。ただあくまでMBAの授業なので、欧州内外でビジネスを進めていくときに必要となる知識を身につけるということで、ビジネスでの対応に焦点が当てられています。

結構レクチャーの比率が高いので、クラスメイトによっては退屈だとか面白くないって言ってた面々もチラホラいましたが、まぁ、そのあたりはバックグラウンドにもよるかと思います。特にEUの歴史や組織の説明、EU法の解説は確かに刺激度はないですが、個人的には行政出身なのでとてもおもしろかったですし、何と言っても説明が上手なので理解しやすかったです。マーケティングとかよりもこういう科目の方が、やっぱ性には合っているんですね、魚尾獅には。

授業で扱ったのは前述の歴史・組織・法体系といった概念から、域内の移動の自由(商品・サービス・労働者・資本)や不正競争の防止といった、EUの掲げる超重要な市場政策について学びます。あとケースとしてはロビーイングを扱います。新たな規制の適用にあたり、企業、業界団体、消費者団体等々チーム毎に分かれて、EUの委員会や司法当局にアピールするシュミレーションを行いました。

EU自体は本当にユニークというか、少なくとも日本人の感覚(少なくとも行政出身者としては)とはいろいろかけ離れています。ただ1950年代からいろいろ試行錯誤のうえ、現在に至っているわけで、特にEU法はいろんな形で個人や企業の権利に影響を与えていることがわかります。EUという1つの市場を形成するために、EUの原理・原則はかなりの形で参加国の国内法を上回るパワーを持っているように感じましたし、逆にそれを利用して個人や企業が司法判断を求めることも積極的なように感じました。

日本だとなかなか個人や企業が法によって守られている個別具体的な権利・利益というのはどうしても狭く解されがちですが、EU法だとかなり柔軟というか、やりすぎというか、良し悪しはともかく日本との違いは実感できます。これはかなり古い事例ですが、ドイツが一定のアルコール度数を超える酒類の販売を規制しようとして、フランスの高アルコールの酒を規制しようとしても、域内の移動の自由に反するわけで、フランス・メーカーは裁判所で規制を争っていますし、比較的新しい例でも、オランダのように合法ドラッグに関する規制も、ドラッグの移動の自由を損なう、なんて争いもあったりするわけです。それぞれの国内法による規制も、当然目的があって(例えば、保健衛生上の観点からの規制とか)それなりに合理的な理由があるとは思われますが、EUとしての経済法上のルールというのもかなり強い力を持っていることを学ぶことができました。

そういうこともあるのでロビーイングが盛んというのもよくわかります。実際にロビーイングに強いコンサルタントの講演も授業中にありました。どうしても癒着とかネガティブなイメージで見てしまいがちですが(日本人的には)、EUの委員会側も業界との意見交換自体はウェルカムなようで結構オープンに行われているみたいです。日本だとどうしても儀式的な要望とか意見交換とその裏…みたいなことが多い気がしますが、当地では少し異なるようです。

そんな興味深いEUですが、EUそのものの存在感というのは欧州の日常生活ではなかなか感じられないような気もします。我々は外国人だからなおさらですが、やはり一般的に人々の帰属意識というのはそれぞれの国家にあるわけで、EUの市民権というものがクリアに存在していても、なかなか意識としては芽生えないようです。EU議会の選挙とかでも投票率は高くないようですし(特に若年層、ただ具体的な数字は失念しましたが)。

別に国家の統合を目的としているわけではないので不要っちゃ不要なんでしょうけど、帰属意識という意味でのEUという存在は身近なようで遠いというのが実態なのでしょうか。参加国の財政問題などいろいろ話題には事欠かない今の状況で、EUの存在がどこまで市民生活に根付いているのかと言われると、いろいろ恩恵を受けていそうな気もしますが、決して市民にとって身近でもない不思議な存在なのかもしれません。

欧州のビジネス・スクールで勉強する者として、地味な科目ですが、非常に楽しい授業でした。
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マーケティングいろいろ

HEC Parisってどんなビジネス・スクール?って関係者に尋ねると、「マーケティングが強い学校」という答えがかなり多いと思います。かくいう魚尾獅もそう思って受験しましたし、面接でもそういう話題になりました。実のところ、勉強するにつれ自分の興味はいろいろ変わってきているのですが、それはさておきHECは、なぜマーケティングで有名な学校なんでしょうか。正直今のところまだ実感まではいたっていません。

ただ他のスクールの友人の話を聞く限りでは、マーケティング関連の科目は多彩なようです。選択科目になって、どれぐらいの授業数が用意されているかってのは、学校の方針や規模など、いろいろ違ってくるでしょうけど、学校の規模の割にはマーケティング系の授業は多いようです。じゃ、多いと何が良いのか?それは、やはり全然タイプの違う教官から異なる知見が得られるってことなんでしょうね。

この第3学期では、マーケティング関連の授業を2つ選択しました。1つは「戦略的マーケティング(Strategic Marketing)」、もう1つは「創造的マーケティング(Creative Marketing)」。ま、授業の名前はこの際あまり重要ではありません。結構適当というか、教えている教官がそもそも授業の名前間違ったりしていることもあるぐらいですから。

授業を選ぶときのポイントにもなりますが、実務家かアカデミックか、ケース重視か理論重視か、議論重視か講義重視か等々、いろんなパターンがあります。実務家=ケース重視=議論重視とかそんなわけでもないです。いずれにしても、正解のない世界を、各教官がいろんな視点から語るのが選択科目の醍醐味なので、うまく選んで異なる知見を得るようにするというのを私は重視していました。そういう意味ではHECはいろいろな機会を提供してくれると思います。

まずは「戦略的マーケティング」の授業の振り返りから。

担当のBharadwaj教授は米国ジョージア大学で教鞭を執っているインド系の先生。HEC以外にもWhartonやIndian School of BusinessとかSingapore Management Universityとかでも教えているみたいです。

この授業の特徴でおもしろいのは、コアのマーケティングや他のマーケティング科目の復習の機会という位置づけなこと。いろんなマーケティング・コンセプトのおさらいの場なんです。そう聞くと、ちょっと華がないというか地味な印象ですが、個人的にはちょうど良かった。ケースもカスタマー・サービスに焦点を当てたスターバックスのケース、BoPターゲットのビジネスに関するダノンの南アフリカでのケース、日本でも一時期展開していた韓国のCyworldによるソーシャル・ネットワークのケース、オンライン・バンキング等に関するスペインBBVA(リーガ・エスパニョールのスポンサーでも有名ですね)のケースなど、国も分野も多彩で普通にケース読みが楽しかったです。

あともう1つ、この授業の特徴はとにかく数字にこだわること。数字に基づいて議論することを徹底しています。このあたりはコアのマーケティングとも、HECっぽいマーケティングのクラスとも違ったところ。インド系の人のステレオタイプなイメージの1つに数字に強いってのがありますが、この先生はホント数字というか計算が速く、びっくり。発言も定量的な根拠を求められるので魚尾獅には厳しかったですけど。

顧客の満足度の違いでどれぐらいの収益が変わるか、いわゆる顧客生涯価値(Customer Lifetime Value)ってやつですね、あとセグメンテーションはオンライン・シミュレーションでしたが、これもかなり数字重視、オンラインのソーシャル・ネットワークやバンキングの話題も、顧客1人あたりのもたらす収益の試算等々、数字を追っかけさせられる授業でした。

でもそれぞれのまとめがちゃんとしているので(授業の組み立てが上手い)、そういう意味では知的満足感も味わえるクラスでした。アカデミック系数字重視で幅広い分野のおさらいができるオトクな授業でした。

一方、もう1つの「創造的マーケティング」は全く違うタイプの授業。HECの卒業生ですが、エルメスやP&Gでバリバリのマーケッターとして活躍した後、今はコンサルティングやったりEMBAやMBAで教えたりしている実年齢より10年以上は若く見える女性教官、Corinne Dauger氏。

アカデミックさは全くないと本人が豪語しているように本人の経験を中心に、ときにはちょっと強引やんって思えるほど自説を強力に展開する。一言でいうと、ブランドを2種類に大別し、ニーズに基づき解決策を提供する機能的なブランドとウォンツに基づく感情的なブランドがあるとして、後者はいわゆるラグジュアリー・ブランドとして、前者のようなおなかがすいたから食べるものを提供するというロジカルで商品中心のマーケティングとは違う、より豊かな経験を提供できるよう創造的なインスピレーションにより食欲をかき立てるようなマーケティングが必要なんだ…みたいなお話しです。

結果的に、HECお得意のラグジュアリー系の事例がいっぱい出てきます。Chanel、Dior、Hermes、Calvin Klein、Porscheも出てきましたね。需要の掘り起こし、陳腐化の防止、いつ商品を変えるか(頻度・程度)等々。リスクを取って、顧客の予期しない商品を世に出すことの大切さ等おもしろい話がいろいろ聞けます。常にインスピレーション・ベースの創造的なビジネスとデータ重視の機能的なビジネスという2つの軸を比較しながら授業を進めるので、一貫性がありわかりやすいです。彼女曰く即興性のあるジャズ・オーケストラと機能的なシンフォニー・オーケストラの違いのようなものだって言ってたけど、まぁわからなくはない。

あとデザイナーとのつき合い方(議論はしかけてよいが一方的な判断はするな、時間は多めに与えるべきだが期限は明確に等々)、広告戦略の分析とか、ちょっとしたTIPSがちりばめられている感じです。

個人的にはそんなにラグジュアリー系のビジネスには興味はなく、ビジネスのためとはいえ、消費を煽るがごとくいろんなものが世に出てくるのは経済的な効果があることはわかりつつも、??って思うことも多いのですが、話は面白いです。他にもラグジュアリー系のマーケティングのクラスはいろいろあるので、そういうのばっかり取っていると飽きてくるでしょうが、魚尾獅は初めてだったので新鮮でした。

かなり自信満々な感じで、あまり異論を認めない?雰囲気が漂っていますが、自分との意見の一致不一致は別にして、メッセージが明快なので、賛成でも反対でも自分の頭の中を整理するのにはよい機会でした。

今学期受講した2つのマーケティングのクラスでも全く違う世界でしたので、いかに教官の数だけ違う世界があるのかわかっていただけるかと思います。まだHECのマーケティングの全体像はわかっていませんし、自分自身もマーケティングに没頭するつもりはさらさらないですが、選択肢が多いことだけは間違いないかと思います。なので、やはりHECの売りの1つってことで間違いはないのかもしれませんね。

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第3学期終了…MBA生活は最終コーナーへ

今日が第3学期の最終の授業でした。標題にあるようにこれで75%が終わってしまいました。残すは9月からの最終第4学期のみ。わかっていたつもりでも、時間の経過の早いことは驚かされます。そしてほぼ渡仏から1年近く経過していることにもなるんですが。

何回か書いてきたように、今学期はMBAプログラムから離れて、ソーシャル・ビジネスの特別なプログラムを中心に受講していたのですが、MBAの選択科目も3科目受講していました。今日でそれが終わったのですが、その話題はまた日を改めるとして、別の話をしたいと思います。

これから9月までは夏休みってことで、もちろんうれしいのはうれしいのですが、イマイチ気分が盛りあがらないのは、この時期からクラスメイトとのお別れのシーンが増えてくるからなんです。別れの季節なんですよね。

我々2011年9月入学生は、9月~12月、1月~4月の全2学期は必修科目なので別れも何もないわけですが、最初の別れの時期は4月に来ます。授業の代わりに企業等でのインターンシップでも単位の取得が可能なので、4月からキャンパスを離れる人が出てきます。そしてこの7月で3学期が終わると、9月からの最終学期は交換留学に行ってしまうクラスメイトが相当数いるので、いろいろお別れしなくちゃいけなくなります。

米国に多い2年制のプログラムだと交換留学後、またキャンパスに戻ってくるパターンが多いと思われますが、HECのような2年未満のプログラムだと、そのままキャンパスに戻らないのが一般的。もちろん、交換留学に行くこと自体は前から知っているので今さら驚くことは何もないのですが、やっぱり寂しさというか少し感傷的になります。私、魚尾獅は来学期もHECにいるのですが、自分が見送られるより、見送る方が寂しさが増すような気がします。

もちろんプログラム自体が実質的に終了する12月になれば、もっと寂しい気分になるとは思います。ただ、これまでの経験上、自分が部屋を明け渡したり諸々の手続で忙しくなるので、そんなことも感じていられないってパターンになりそう。それだけに今の方が、ちょっとした祭りの後のような心境になるわけです。

みんなとちゃんと別れの挨拶ができるわけでもなく(もちろん友だちとしての距離にもよりますが)、昨日、遠くでちらっと見ただけのクラスメイトが実はその昨日がキャンパス最後の日だったってあとでFacebookで投稿があったりなんかして、「ちゃんと話ておきたかったな」みたいなこともありました。

また4月から交換留学でHECに来ていた一団もこれから順次帰国の途につくようです。わずか数ヶ月とはいえ、一緒に旅行に行ったクラスメイトもいるし、いろいろな思い出ができました。

今のご時世、Facebookやいろんなメディアがあるので、別に離れてもコンタクトを取るのは難しくないとは思いつつも、こうやって区切りをつけながら、みんな次の目標に進んでいくんだなぁというのを強く感じた3学期の最終日でした。

魚尾獅はもともと受講予定ではありませんでしたが、もう1科目、明日から開講予定だったのがどうも急なキャンセルになったみたいです。なので、我々の代は名実ともに今日が今学期の最後の授業ということになったようです。

今日の授業の後、みんなで写真とかも撮りました。これから交換留学に出るクラスメイトは、今日がHECでの最後の授業。ダブル・ディグリーや交換留学で来ているクラスメイトは今日がMBAの最後の授業。


そして、我々は来学期もこのキャンパスで授業を受けるとはいえ、このビルでの授業は我々にとっても今日で最後…(たぶん)。

そしてこれからはこちらの新ビルディングで!


せっかくなので、今日が最後の面々と、まだ実質的にオープンしていない新ビルディングに潜入してきました(一応、記念式典みたいなのは終わっているんだけど)。


今までの環境から見違えるだけに(今までがひどかったということもあるが)、交換留学しない方がよかったかな、なんて思っちゃうクラスメイトも…。


新築の素敵な香りが漂っています。将来的にはMBA生の数も増やすことを想定して作っているようですが、来学期はまだ人数は従前通り。なので良い環境で勉強できるのかもしれませんね。


そして9月になるとまた新しい9月入学生がキャンパスにやってきます。今度は出会いの季節ですね。

HECで学んだ仲間たちの今後の活躍を祈りつつ、これからやってくる新たな仲間との良い出会いを楽しみにしたいと思います。

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ソーシャル・ビジネス認証プログラムを振り返る(3)

HECのソーシャル・ビジネスの有名コース、Social Business/Enterprise & Poverty Certificate (SB/EP) の振り返りの最終回です。

C4:新消費者行動論(New Consumer Behaviors)

SB/EPの責任者かつマーケティングの有名教授、F.ダルザス教授の渾身の?授業。とにかく飽きさせないように工夫をこらしつつ、半ば強引とはいえ結論まで持っていく手腕はさすが。好き嫌い・賛成不賛成はともかく、授業では常に彼の考えやメッセージがとてもクリアなのでわかりやすいです。

他のコースがあくまで企業側の視点に立って議論されているのに対し、本コースではあくまで消費者の行動に焦点を当てることで、マーケティングの観点から、いかに消費者が社会問題の解決等につながる行動を取るのか(取らないのか)を中心に、マーケティングで何ができるのか?といった方向でコースは展開されました。

肝の部分としては、あくまでマーケティングの授業なので、直接他のコースとは関わってこないところもあるのですが、さすがにSB/EPの責任者だけあってダルザス教授は、他の授業で扱っているケースも引き合いに出しながら、うまく授業をコントロールしていきます。

本当に面白い授業だったので、いろいろ書きたいことがあるのですが、彼のメッセージの要点だけ簡単に書くことにします。

ダルザス教授はいわゆる伝統的なマーケティングを嫌うタイプの教授です。不必要な消費を煽り、時には消費者を騙す(とは言ってないけど、誤認させるかのようなという意味か)ようなマーケティングを「醜い」と一刀両断します。彼曰くマーケティングの将来は3パターンあるらしく、それぞれ、エゴ・マーケティング、テクノ・マーケティング、アルター(Alter)・マーケティングと名付けています。

エゴ・マーケティングは、従来型の消費を刺激しようとするタイプのマーケティング。授業の余談ですが、何年か前、F1界のボス、B.エクレストン(Bernie Ecclestone)がロンドンで強盗に遭い、殴る蹴るの暴行を受けて自らのHublotの高級腕時計を奪われた際、事件直後の負傷写真を使ってHublotの広告に利用することを思いつき、"See what people will do for a Hublot."というキャッチで広告を打ったという話を教授がしていましたが、これもダルザス教授にとっては「醜い」ものだったようです。これこそエゴだ、みたいな感じなんでしょうね。
(個人的には洒落っ気があるとは思いますが…。興味があればGoogleで検索してみてください。たぶん出てきます。)

エゴ・マーケティングはこれまでのセグメントから個人重視。消費者との対話というよりは消費者とともに商品開発をする方向なるだろうというのが彼の見立て。テクノ・マーケティングは、ITを駆使することでマーケティングのあり方が再考されるというもの。これは単純というか当たり前のことですが。もっとも、逆に一消費者であっても、website経由でいろんな発信ができるようになってきているということも確か。

そんな中でダルザス教授がもっとも力を入れているのは、アルター・マーケティング。マーケティングこそが消費者が考えていることを実際に行動にうつす(または消費者の行動を変える)のに重要な役割を果たしているんだ、というのが彼の考えなんですね。マーケティングにより消費者の行動を変える。エゴ・マーケティングに対抗するためにアルター・マーケティングで消費者をより良い方向(何が「良い」かはさておき)へ変えたいということです。行動を変える際の要因は、個人的な事情であったり、法的な規制、教育等々がありますが、マーケティングもその要因の1つであり得るのではという話。

授業で盛り上がった1つの話題は、ホテルのタオル交換の話。環境保護云々の理由から、できるだけ連泊中のタオル交換なしで元のタオルの再利用についてご協力ください、みたいな掲示が日本でもされていると思います。

とあるホテルで、この再利用率を高めるため従前の掲示に新たなメッセージをつけ加えたらしい。
新バージョン1「当ホテルに泊まられたお客様の約70%が再利用についてご協力くださっています。」
新バージョン2「当ホテルのこのお部屋(○○号室)に泊まられたお客様の約70%が再利用についてご協力くださっています。」

実際このメッセージでどうなったかというと…
 当初(35.1%)→新バージョン1(44.1%)→新バージョン2(49.3%)
なるほど、再利用率を高めるという意味では一定の効果があったわけです。

ただしこのアプローチの良し悪しは意見が分かれるところ。だって、「70%が」というくだりは事実じゃないわけですから。授業でも「単なるウソつきだ!」という意見も出ていたし、逆に「結果として人々の行動が好ましい方向に変わったんだったらいいんじゃない。」という意見も。そもそも35.1%→49.3%という数字も信じられない(元々方便で適当な数字を使っているぐらいだから結果のデータも信用できない)みたいなことまで。

ダルザス教授が言いたかったのは、これがマーケティングの力だということ。正しく使われれば影響は大きい。行動にインパクトは与える反面、一種の倫理的というか道徳的なジレンマが常に発生するという事例だってことです。

そんなダルザス教授のお気に入りの事例は、男性用トイレのハエ・マーク。わかります?アムステルダムの空港が有名ですが、男性用トイレの便器にさりげなくハエのマークを施すことで、用を足している男性の意識がそこに集中し、汚れが飛び散ることもなく清掃もスムーズになりきれいなトイレが維持できますってやつです。本当に効果があるのか統計的に有意なデーターがあるのかは知りませんが、彼はこれこそがインセンティブ効果だと言ってて、みんな爆笑してました。マーケティング的な創造力でちょっとした行動を誘導する、それが彼の理想型のようです。

ちょっとソーシャル・ビジネスから離れたけど、消費者行動に関わる彼のレクチャーは本当に面白かったです。残念なのは、今MBAのプログラムでは彼は講義を持っていないこと(2年前までは教えていたのですが)。今やMBAでマーケティングのトラックを選択しても彼の授業は取れないので、マーケ選択でもない魚尾獅が彼のクラスを取れたのは非常に幸運で、これも何かの縁かなって思っています。
(ちなみに彼は日本在住経験も長いので、日本ネタが好きです。変な日本語で話も振ってきます。)


C5:Finance and Social Business(ファイナンスとソーシャル・ビジネス)

ソーシャル・ビジネスのファイナンスに特化した女性講師2人を中心に、ロール・プレイをふんだんに盛り込んだ実演型ファイナンス・コース。面白いけど、これも短時間であれこれ詰め込みすぎでちょっと無理があったかなという感じ。

起業家役、地方政府役、大銀行の地方支店役、ベンチャー・キャピタル役、NGO役などが一定のストーリーをベースに円卓会議を開いて議論したり、多額の寄付をベースにどうやってファンドを組成するかとか、単純にベンチャー・キャピタル・ファンド立ち上げプランを作るコンテストなど、ワークロード的には負荷が高かったクラス。

魚尾獅は、元々の背景知識が不足しているのですが、他のマスターの学生はだいたい共通のやり方というかメソッドが頭に入っているらしく、ちょっと噛み合わないこともありましたが、最終成果品を見ると、何が必要とされているかは何となくわかったような…。先に理論というか基礎知識の定着を行ったうえで、実践に入ればより効果的だったような気がします。

C1のモバイル・バンキングで登場したライ教授(Minh-Huy Lai)がここでも登場。相変わらず切れ味鋭い明快な口調と体系化された説明技術で、貸付・貯金・保険等々、マイクロ・ファイナンスの各種サービス全般の詳しいレクチャーが聞けました。その後、ケースでおさらい。理論→ケースの流れが体得しやすいという良い例。

グラミン・グループに代表されるようにアジアでは7割近い浸透率をもたらしたマイクロ・ファイナンス。一方、一昔前の日本の消費者金融問題のように、いろんな規制の必要性も検討されており、マイクロ・ファイナンスの実施主体も玉石混交といった状態。より消費者保護の観点に今軸足が移されてきていますので、本当に日本の消費者金融業界のように大きな変化があるかもしれませんね。


SB/EPのプログラムは、以前記事にも書いたビジネス・プランのコンテスト、Social Business Labや多彩な講演会など本当に盛りだくさんです。これをどのように自分のものにするかも自分次第です。手を抜けばいくらでも抜けるし、そうじゃないようにもできます。自分も含めて、みんないろいろ関心は違っているので、それぞれ自分のこだわりを持ちながら取り組んでいたように感じました。他にも書きたいことはいろいろあるのですが、キリがないのでこれぐらいで。

コース全体のオーガナイズは、MBAに比べると、ちょっと弱いというか、例えば成績評価の問題や提出課題に関する連絡等が混迷していたのはちょっと残念なところ。ただ、オフィスのこのプログラム担当の女性スタッフは本当に熱心で、授業にも結構来てましたし、プログラムの内容を見直したり、以前紹介した(記事はこちら)、ダノンやユヌス博士のイベントとの連携、卒業生情報や各種インターン情報の提供など、ワン・ストップで全ての業務をこなしていました。スタッフのやる気からも、このプログラムの力の入れ具合は感じることができました。
(アカデミック側でない、いわゆる事務方が授業受けているのはさすがに珍しい。)

細かいことはいろいろ要改善なのですが、魚尾獅自身は非常に納得したというか充実したプログラムだったと思います。交換留学での受講も可能なようですので、他のビジネス・スクールでHECに関心のある方も、4月以降の春学期であれば、受講できる可能性もあると思います。

最後に、公式サイトのリンクだけ貼っておきます。こちらからどうぞ(情報が薄いのが難点ですが)。

これで今学期も無事終了…と行ければ良いのですが、HECのMBAプログラムは7月上旬まで授業があります(そこが2年制の学校よりややタイト)。まだ終わっていない選択科目があと2つあったりします。「ヨーロッパ事情」と「クリエイティブ・マーケティング」。後者に至ってはまだ始まってもいません(集中講義なので)。

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ソーシャル・ビジネス認証プログラムを振り返る(2)

では前回に引き続き、コース毎に簡単な振り返りをしてみたいと思います。

C1:BoP層に対する新しいビジネス・モデル(New Business Models at the Bottom of the Pyramid)

このコースでは
-既存企業(特に大企業)が行う (←新興企業や起業家ではなく)
-途上国における (←先進国ではなく)
-利益を最大限追求するビジネス or ソーシャル・ビジネス
という切り口でのアプローチしていきます。

扱ったケースはいろいろです。以下はHECのオリジナル・ケースです。新作も多いとか。
-エシロールのインドでの眼鏡販売
-グラミン・ダノンのバングラデシュでのヨーグルト販売
-ヴェオリアのモロッコでの水道事業
-シュナイダーのインドでのランプ販売

これらフランス企業のBoP層に対するビジネスのほか、イノベーションをテーマに、商品開発や流通網の構築などのレクチャーもあり、川上から川下まで多岐にわたっています。

講師はテーマによりいろいろ交代するのですが、メインのD.メナセ講師は自らソーシャル・ビジネスのコンサルティング・ファームを起業しています。いつも明快というわけでもないのですが(個人的にはなるほどって思うときと、??ってなるときと両方あった)、コンサルらしいスキームを使ってレクチャーします。他の講師も上手い下手はいろいろあるので、全て良かったとは言いませんが、トピックが面白いのであまり気にはなりません。

ケースは前半に集中していたのですが、だいたいケース共通の課題(特に流通網などローカル・パートナーの問題)を最初に認識したうえで、後半のレクチャーでその解決法が示唆されるみたいな感じで納得感はありましたね。たぶんそのように意図してやっているわけではなさそうでしたが…。

流通網の構築は、既存のネットワークを使うか使わないか、小売りの店舗を使うか使わないかで2×2のマトリクスでアプローチするもの。さらに消費財かどうかなど、新たな検討ファクターをどんどん重ねていく形でポイントを整理していきます。ソーシャル?ビジネスのキモの1つは流通網の確保だと思っているので、真新しさはなかったけど、モヤモヤしてたものがスッキリ整理されていくので、自分の部屋の大掃除しているときのような快感?がありましたね。

あと、イノベーションの関係では、個人的に興味のあったモバイル・バンキングも取り扱われました。事例はケニアのM-PESAです。Vodafoneがケニアの企業と組んでやっているSMSを使った電子マネー・サービスですね。魚尾獅は当初聞いたときに単なる決済サービス程度にしか認識していなかったのですが、授業でちゃんと聞くと、これは銀行サービス並の多彩なサービスなんですね。

ケニアでは銀行口座を持っている人が約2割。それ以外の人はいわゆる金融サービスの対象顧客とはみなされておらず、どんなときでも現金で決済したり高い手数料で送金するしかなかったわけですが、治安の悪い地域等で現金を持ち歩くこと自体がハイ・リスク。その点、簡単な手続で口座が持て、SMSで送金したりお金を受け取ったりできる、このサービスは画期的でした。6割以上の人が携帯を持っていて、携帯電話会社の店をATM代わりに使えるというのも、流通網の観点からも合理的ですし。

国の法規制の対象にもなるので、実際にビジネスを動かすのは相当大変だったようですが、2007年のサービス開始以来、現在1,500万人以上がユーザーとして利用するサービスに急成長しています(ケニアの人口は5,000万人弱のはず)。元々シェアの高かった携帯電話会社としての知名度、簡単な操作、政府との良好な関係、利用者のニーズに巧みに応えている等々が成功の要因かと。

この回を担当したExcecutive MBAのライ教授(Minh-Huy Lai)のレクチャーは、非常にまとまりがあって授業が上手かったです(目つきが険しく、やたらに当てまくるのがちょっと面倒でしたが…)。

このコースはSB/EPのプログラムのベースとなる大事なコースだったなぁと思います。


C3:途上国における社会起業(Social Entrepreneruship in Poor & Developing Countries)

このコースはC1と対照的に
-新しい起業家による
-途上国における
-利益追求型 or ソーシャル・ビジネス
を扱います。

このコースでは、最初に社会起業家を、コミュニティー・ベースの活動、地方ベースの活動、海外といった感じに、カテゴリー分けして、それぞれ起業家に来てもらって講演を聞いたり議論したりするというもの。

これはちょっと消化不良なコースになりました。時間が十分じゃなく、それぞれの講演からのテイク・アウェイが明快じゃなかったことや、そもそも最初のカテゴリー分けが無意味とは言わないまでも、あまり実益がない(カテゴリーの違いが実際のビジネスのスタイルの違いにあまり直結していない)等々の理由で、イマイチ核心に迫れなかった感じがしました。ちょっと3時間×5回の授業だと苦しかったかな。

手元のノートを見ても、起業家ごとにSWOT分析とかしてますけど、似たような言葉が踊っていて、うまく整理できた感もありませんでした。そのあたりは、今年のフィードバックには記載したので(他の学生も似たような感覚は持ってたみたいだし)、来年以降、さらに改善されることを期待します。

興味のない方には申し訳ありませんが、次回もこのトピックで…。

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プロフィール

Merlion(魚尾獅)

Author:Merlion(魚尾獅)
SINCE APRIL 2010

第4部 アフリカの奇跡(2014年12月~)

第3部 フランス留学生活(2011年8月~2012年12月)

第2部 留学準備中(2010年10月~2011年7月)

第1部 "Business School"へ挑戦(2010年4月~2010年9月)

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